ソノ アイダ#新有楽町
最終企画展示 『いつものソノ アイダ』




これまで新有楽町ビルで制作活動を行ってきたアーティストの作品を展示致します。 112区をメイン展示会場として設定し、2023年9月より使用開始させて頂いている117区135区でこれまで新有楽町ビルで制作活動を行い有楽町エリアに所縁のあるアーティストの作品を展示し、アーティストが多数いる風景で新有楽町ビルににぎわいを創出していきます。


概要
会期:2023年10月20日(金)~10月29日(日)
時間:12:00〜20:00
オープニングトーク : 10/20(金)18:00〜
ラストパーティー : 10/28(土)18:00〜
会場:ソノ アイダ#新有楽町
住所:東京都千代田区有楽町 1-12-1 新有楽町ビル1階
出展作家:相澤安嗣志/ 池田杏莉/ 岩村寛人/ 尹苑/ 三(大倉佑亮森ナナ石川竜一)/ 島内秀幸 丹原健翔/ 東城信之介/ 戸田沙也加/ 花崎草/ 藤崎了一/ 藤元明/ Hogalee/ Michael Rikio Ming Hee Ho/ 松井祐生(関川卓哉)/ 森靖/ 山口塁やんツーRyu Ika
主催:株式会社アトム(A-TOM Co., LTD.)
企画:ソノ アイダ実行委員会
協力:三菱地所
機材協力:BLACK+DECKER / DEWALT / LENOX / IRWIN
Curated by Amatorium



8年ほど前から主宰の藤元明氏が始めたソノ アイダというアートプロジェクトは、建て壊しが決定しているビル や、契約上すぐに貸し出すことができない空間など、限定的な期間の間を空間メディアとして活用し、様々な場所 で起こりうる日常たちの「その間」にアートを持ち込むところに特徴がある。新有楽町ビルにある本スペース「ソ ノアイダ#新有楽町」も、21年12月に開始した当初から23年11月ごろの建て壊しが決定していた。ほぼ2年間と いうこれまでで最長のプロジェクト期間となった本スペースは、それまでは長くても数ヶ月という単位で転々と実 施されてきたソノ アイダにとって「日常の間の非日常」として扱うには長く、この活動自体がまた、誰かの日常の 一部となっていくことが見られるのであった。10月半ばに終えた第12期のレジデンスを経て、実に50人以上の作家とこの2年をこの空間で過ごしたことになる。 我々運営に携わる者や参加作家の皆様だけではなく、毎回のレジデンスに顔を出してくれる仲間たちや、同じビル に勤務をし通勤時に横目で眺める人にとっても、このスペースが日常の一部になっていただろう。そもそもアート というコンテンツが非日常性を演出するスキームになることが多い中(例えばそれは美術館の企画展や綺羅びやか な企業イベントでの出し物など)、アートプロジェクトの日常性というもの自体あまり語られることがない。それ はコロナ禍や戦争、個人から社会単位までの事件や政治、日に日に変化する人間関係など、この2年間においての あらゆる事象に癒着し変容するものであったことは言うまでもない。少し話は脱線するが、革命時のフランス市民だったセレスタン・ギタールの日記を記した『フランス革命下の一市 民の日記―1791~1796』(中央公論新社、1980)では、気温や天候など日々の天気が記されている。それは、歴 史という大きな流れにとっては取るに足らない情報かもしれないが、例えばマリー・アントワネットが処刑された 1793年10月16日は12度の肌寒い快晴の空だったことが記される。髪を短く切った彼女が処刑台の上で空を見上げ る最期を想像するにあたって、当時の空気感や景色の情報は大きな意義がある。日常がそのような史的には些細な 情報をたよりに記憶として蘇り、いきいきと語り継がれることは、誰しもが経験していることだろう。最後の展示としてこのスペースの2年間の主要な出来事たちを共に振り返る試みも検討された。ただ、このスペー スでそれらを史的に俯瞰するのではなく、当事者として、ここでまさに生まれた様々な作品たちを、各々の日常の 記憶とのつながりとして祝福できたら。それは作家がいつどこで誰と展示をしたのかとか、本スペースがどういっ た座組の中で有楽町という町に現れたのかといった話より、もっと尊い、生きた物語を語ってくれることを期待す る意味もある。このスペースを毎日夜遅くまで通いながら制作をしたレジデンスの作家の方々や、時に喧嘩をしな がら行った数々の打ち合わせ、泣き笑いの声が絶えなかったレセプションパーティー。そのような事象たちがたし かにここであったことは、それぞれの記憶の中で様々な色合いをもって思い出される。多くの人の日常の一部になったソノ アイダ#新有楽町が、一人ひとりの物語において、何と何の「その間」になっ ていたのかを、閉館のタイミングで個々で考えることに意義があると思える。
丹原健翔

©️2015 ソノ アイダ